<カントリーロード>
年が明けて4日目の観光は世界遺産の街、アヴィニョンから始まった。1309年から68年間にわたって政治・経済の中心となったアヴィニョン。繁栄の時代を築いたアヴィニョン。
往時を忍ばせるような重厚で重みのある建物が私たちを迎えてくれた。法王庁、サンベネゼ橋、どこも長いフランスの歴史の跡をうかがわせる重厚な造りの色と形だ。
フランスの洗練された美しく繊細で可憐な、まるでベルサイユ宮殿をその象徴とするようなフランスの
お国イメージとは一転して、素朴で地味なこの色彩は私のフランスのイメージにまた一色加える結果になった。
そもそもニースの華やかなコートダジュールを走り抜けてからの印象はどうだろう。南フランスのイメージ通り、明るい太陽とその恵みから生み出された豊かな自然の賜物。
それらは確かにイメージを崩すことはなかったけれど、ニースから遠ざかるほど、目に飛び込んでくる景色は素朴さを増す。そうだ、こんな風景をどこかで見たことがある。
スペインの、オリーブ畑がひたすら続くあの道。それもそのはず。この海岸線はまっすぐにスペインに通じているんだ。
フランスの洗練された美のお国イメージから、ともすれば相反するイメージさえ持つこの南フランス地方に流れる素朴な空気の発見は、私の中の旅の興奮を日に日に落ち着いたものに変えていった。もしここがパリ近郊の街だったならば、もっと多くの刺激を受けさぞ興奮していたことだろう。
遠くパリから離れたこの場所はじっくりと旅に向き合わせてくれる絶好のエリアだったように思う。走る抜ける道のイメージから「東北自動車道のようですね」なんてのんきな言葉も
思わず口をついて出る。そんなノンビリとした空気の流れとまるで日本のカントリーロードを行くような安心感が長い時間私をずっと包んでくれていた。
車窓から外を眺めている長い時間も、リラックスをして時折うつらうつらと心地よい睡魔に襲われながらの、とても心地よいものだった。
初めて訪れた気がしないのはこの道が日本の原風景にも似た優しく穏やかな景色に彩られているせいかもしれなかった。
そしてこの場所はパリがまだ遠いことを教えてくれた。
<冬の空>
リヨンの街に入ってから目指すのは今日最後の観光場所フルビエールの丘。そこに建つ大聖堂を訪れた。夕方から夜にかけての冬の空はこんなに切なかったけ。
ちょっと曇りがちな空もその場所に教会が建っていることも、見渡す景色の中にネオンが光り始めたことも、冬の冷たい空気も全てが切なく感じられてくるではないか。
もう二度とこの場所には来れないんじゃないかと感じ始めるセンチメンタルジャーニー。いけない、いけない、笑顔、笑顔。。。
遠くを見つめていたらキラキラと輝く観覧車。あの観覧車のTOPとこの場所からの景色はどちらからの眺めが美しいのだろう。そんなことを考えながら寂しい気持ちを吹き飛ばす。
カップルが近くで忘れ物をしたと、その場を一瞬だけ離れた。集団の中の自分に引き戻されその暖かさに気付く瞬間。切ない気持ちを吹き飛ばすチャンス、
ちょっぴり救われたアクシデント。
そう、きっとまた来るからね。できたら今度はもっと暖かい季節に。そして太陽の光が降り注ぐ午後にこの場所に建つことが出来たらいうことないんだけれど。。。